山本哲先生の作品
つる由別館にて、漆芸作家 山本哲氏の興味深いお話を聴きました。
まず漆との出会いのお話です。
大学で哲学を学んでいた頃、教育者になろうと考えていらした山本氏は、
つらつらと考えるうち、「自分には人に教えるもの、伝えるものがない」と
漠然と感じて道を変えていかれたとのことでした。
アルバイトがきっかけで創作の世界と出会い、師匠との御縁を賜るお話の件に、
現在の仕事に就く引力のようなものを感じました。
師匠に連れられて、薬師寺で出会った西岡常一棟梁の何気ない言葉に
仕事に対する心意気と、棟梁の存在感の大きさを感じられたそうです。
漆は日本で9000年前から存在し、東京の下宅部遺跡からは、
漆塗りの木製品や土器などが出土し、漆製品ばかりではなく、
製作過程を示す遺物である、漆樹液を集めるための漆掻きの痕跡、
漆の木が河道の杭、木杭として70本の漆の木として発見されました。
すごいことですね。
漆の特徴は、①漆を溶かす物質が未だ見つかっていないこと、
これはもし見つかったら、新しい使い方ができるということでも
あるらしいです。
②弾力性があって加工がしやすい、③希釈しても使える、こと。
90%が中国からの輸入ですが、工芸の世界では日本製を使うことを
奨励しているとのことで、それは漆は生えた土地に合った成分となっている
からだとのことでした。
漆の創りものが美しいと思う人、それを生活に取り入れようと思う人を
増やしたい、という言葉に共感しました。
美術館で観る仏ではなく、寺にあって信仰の対象たる仏のような。
博物館に鎮座する漆工芸品もよいですが、家庭や会社に普通に置かれている
風景は、まさに文化資本であり、素敵なことだと感じました。